カーボベルデのリアル
万象知楽編集部 / 世界の国のリアル
この本について
『カーボベルデのリアル』は、架空の登場人物の日常を想像しながら、カーボベルデの歴史・社会・そこに生きる人びとの暮らしを読む本です。大西洋から絶え間なく吹く乾いた風、埠頭での別れ、そして夕暮れの港町にゆっくり流れてくるモルナの歌。 この国は「アフリカ沖の小さなリゾート」「名前もあまり知られない島国」「資源のない貧しい島」として語られることが多い国です。本書はその像を否定しませんが、そこで終わらせません。誰も住んでいなかった火山の島々に、海を渡ってきた人びとが暮らしを組み立て、新しい言葉と歌を生み、国外に暮らす同胞とのつながりを保ちながら、乾きと向き合ってきた——それがこの本の立ち位置です。 以下は架空の人物です。年齢は二〇二六年を基準にしています。実在の人物や、特定の証言者をもとにした人物ではありません。 カルラ(二十代半ば)、首都プライアの生まれ。昼は事務所で書類と数字を扱い、夜は小さな店で歌う。携帯電話には、リスボン、ボストン、ロッテルダムに暮らす親族の名前が並ぶ。島で歌っていきたいと思いながら、音楽だけで暮らす難しさも知っている。 ニョ・マヌエル爺さん(年配の男性)、サント・アンタン島の急な谷で、長く段々畑とサトウキビを作ってきた。「ニョ」は年長の男性への敬意をこめた呼びかけ。水路の順番を守り、雨の降らない季節をいくつも越え、谷から出ていく若者を見送ってきた。 ドナ・ジョアナ(年配の女性)、プライアの坂の途中に住み、毎朝大鍋でカチュパを炊く。「ドナ」は年配の女性への敬称。息子のひとりはポルトガルに、もうひとりはアメリカにいて、夫はすでに亡くなっている。毎週かかってくる電話が、台所の日課になっている。 ジルソン(二十一歳)、サッカーと音楽が好きで、友人が多い。ときどき叔父の漁を手伝い、案内の仕事もする。島に残るか、リスボンやボストンへ渡るかを、まだ決めかねている。カルラのはとこにあたる。 平山さん(日本人)、水産の仕事で、十数年にわたってこの国に通う日本人。マグロやカツオをめぐる協力の縁から、魚市場、風力発電、音楽へと関心を広げてきた。乾いた風に驚き、モルナに黙りこむ、読者の分身。 歴史や統計の説明には巻末に参照資料を掲げ、物語の人物・会話は創作であることを明記しています。終章のあとには、旅行の準備、暮らす・働くための手がかり、実用Q&Aと言葉・マナーの実践編を収めました。 シリーズ「世界の国のリアル」は、土地の歴史と人びとの暮らしを、物語を通してたどる読み物です。
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