ナイジェリアのリアル
万象知楽編集部 / 世界の国のリアル
この本について
『ナイジェリアのリアル』は、架空の登場人物の日常を想像しながら、ナイジェリアの歴史・社会・そこに生きる人びとの暮らしを読む本です。日曜の朝に通りを満たす教会の歌声、市場の値切りの声、そして停電のたびに街じゅうでうなりを上げる発電機の音。 この国は「貧しくて可哀想なアフリカ」「石油の国」「治安の悪い危険な国」として語られることの多い国です。本書はその像を否定しませんが、そこで終わらせません。音楽と映画と起業で世界に存在感を放ち、約二百五十の民族と二つの大きな宗教を抱えながら、二億三千万人ほどの人びとが、困難のただ中で暮らしを営んでいる──それがこの本の立ち位置です。 案内役の人物と、その会話・心情・個人的な体験・場面描写は創作です。実在する人への取材や聞き取りを再現したものではありません。 登場人物が語る記憶は、実際の体験者の言葉ではありません。人物の意見は、その国の人びと全体を代表するものではなく、歴史的な事実や専門家の見解の代わりにもなりません。 歴史上の出来事、統計、制度などの説明には、本文中の資料番号に対応する参照資料を巻末に掲げています。資料が裏付ける範囲と、物語として描いた部分は区別してお読みください。 本書は、架空の五人の案内役の日々をたどりながら、ナイジェリアの歴史・文化・社会を物語で読む一冊です。チネドゥ(二十七歳)、アミナ(三十二歳)、フォラケ(二十四歳)、パパ・オコロ(七十五歳)、田村さん(日本人、四十代)。 ナイジェリアは、植民地支配のもとで外から引かれた国境の内側に、言語も信仰も歴史も異なる人びとが束ねられた国です。独立から数年後の一九六七年から一九七〇年には、南東部がビアフラとして分離を宣言した内戦があり、飢えを含め、百万から二百万人が亡くなったとする推計があります。近年も、北東部のイスラム過激派ボコ・ハラムによる暴力、北部や北中央部での武装集団による襲撃や誘拐、農耕民と牧畜民の衝突などが続いてきました。本書は、政府、武装勢力、国連、人権団体、研究者の立場を区別し、誰が、いつ、何をしたか、述べたかを事実として記し、断罪も美化もしません。死者の数は、出典の立場を示し、幅のあるものは幅で書きました。暴力を、特定の宗教や民族そのものと結びつけることは、しません。 大西洋を越える奴隷貿易、イギリスによる植民地支配、石油の富とニジェールデルタの汚染、そして汚職。これらは、当事者によって語りが大きく異なる主題です。本書は、一方を悪者にも、一方を英雄にもせず、当事者それぞれの立場と、事実として確かめられる範囲を区別して書きました。資源の富をめぐる難しさは、「アフリカだから」ではなく、世界の多くの資源国に共通する構造として描いています。 歴史や統計の説明には巻末に参照資料を掲げ、物語の人物・会話は創作であることを明記しています。終章のあとには、旅行の準備、暮らすための手がかり、実用Q&Aと言葉・マナーの実践編を収めました。 シリーズ『世界の国のリアル』は、土地の歴史と人びとの暮らしを、物語を通してたどる読み物です。
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