万象知楽出版BANSHO CHIRAKU PUBLISHING

トリニダード・トバゴのリアル

万象知楽編集部 / 世界の国のリアル

トリニダード・トバゴのリアルの表紙

この本について

『トリニダード・トバゴのリアル』は、架空の登場人物の日常を想像しながら、トリニダード・トバゴの歴史・社会・そこに生きる人びとの暮らしを読む本です。夜明け前の街に響くドラム缶の音、泥にまみれて踊る人びと、そして湿地の木を赤く染めて帰ってくる鳥の群れ。 この国は「カリブの楽園」や「カーニバルとスティールパンの国」として語られることの多い国です。本書はその像を否定しませんが、そこで終わらせません。海の美しさや祭りの熱気と、奴隷制や年季奉公から続く歴史、いまの暮らしの重さとが、同じ二つの島のなかにある――それがこの本の立ち位置です。 案内役の人物と、その会話・心情・個人的な体験・場面描写は創作です。実在する人への取材や聞き取りを再現したものではありません。 登場人物が語る記憶は、実際の体験者の言葉ではありません。人物の意見は、その国の人びと全体を代表するものではなく、歴史的な事実や専門家の見解の代わりにもなりません。 歴史上の出来事、統計、制度などの説明には、本文中の資料番号に対応する参照資料を巻末に掲げています。資料が裏付ける範囲と、物語として描いた部分は区別してお読みください。 本書は、架空の五人の案内役の日々をたどりながら、トリニダード・トバゴの歴史・文化・社会を物語で読む一冊です。アリヤ(二十代なかば)、ウィンストン爺さん(アフリカ系、年配)、サヴィトリ(インド系、年配)、ケヴォン(トバゴ島の若者)、中川さん(日本人、中年)。 この島々には、アフリカから多くの人が連れてこられて奴隷として働かされ、奴隷制のあとにはインドなどから年季奉公の契約で多くの人が渡ってきた歴史があります。本書は、誰が、いつ、何をしたかを事実として記し、断罪も美化もしません。人口の構成は数え方と時点で変わる目安として示し、年季奉公が「自由な契約」だったのか「不自由な労働」だったのかのような評価の分かれる問いは、断定しません。 この国では、選挙のたびに、人びとの出自と支持する政党を結びつけて語る見方が出ます。本書は、その見方が一面を映していることと、日々の暮らしがそれだけでは割り切れないことの両方を書きます。一九九〇年の議事堂占拠事件や二〇二五年の総選挙には、国会の記録にある事実のみを記し、動機や勝敗の評価には踏み込みません。 歴史や統計の説明には巻末に参照資料を掲げ、物語の人物・会話は創作であることを明記しています。終章のあとには、旅行の準備、暮らすための手がかり、実用Q&Aと言葉・マナーの実践編を収めました。 シリーズ『世界の国のリアル』は、土地の歴史と人びとの暮らしを、物語を通してたどる読み物です。

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