レソトのリアル
万象知楽編集部 / 世界の国のリアル
この本について
『レソトのリアル』は、架空の登場人物の日常を想像しながら、レソトの歴史・社会・そこに生きる人びとの暮らしを読む本です。霜の降りた草を踏む音、毛布をまとって峠を越える人影、谷の底で鳴りつづける水の音。 この国は「南アフリカに囲まれた小さな国」「山ばかりの国」として語られることの多い国です。本書はその像を否定しませんが、そこで終わらせません。国じゅうが高い土地にあり、山に集まって生き延びたという記憶と、遠くの町へ水と人を送り出す暮らしを、同じ一つの国の中に抱えている——それがこの本の立ち位置です。 案内役の人物と、その会話・心情・個人的な体験・場面描写は創作です。実在する人への取材や聞き取りを再現したものではありません。 登場人物が語る記憶は、実際の体験者の言葉ではありません。人物の意見は、その国の人びと全体を代表するものではなく、歴史的な事実や専門家の見解の代わりにもなりません。 歴史上の出来事、統計、制度などの説明には、本文中の資料番号に対応する参照資料を巻末に掲げています。資料が裏付ける範囲と、物語として描いた部分は区別してお読みください。 本書は、架空の五人の案内役の日々をたどりながら、レソトの歴史・文化・社会を物語で読む一冊です。ントアテ・タバン(七十歳前後)、メ・パレサ(六十代半ば)、レラト(二十代前半)、マツェリソ(二十代後半)、田中さん(日本人、四十代)。 レソトは四方を南アフリカに囲まれ、多くの人が国境を越えて働きに出てきました。高地の水を南アフリカの都市圏へ送る「レソト高地水計画」は、一九八六年の条約に基づく事業で、国に収入をもたらした一方、ダムの底になる土地から移った人びとの暮らしをめぐる議論も続いてきました。本書は、誰が、いつ、何をしたかを事実として記し、断罪も美化もしません。 一九九八年には、総選挙の結果をめぐる野党の抗議が続くなか、政府の要請を受けた南部アフリカ開発共同体(SADC)の部隊が九月に国内へ入り、多くの死者が出ました。政府、野党、介入した部隊、報告をまとめた側の立場は同じではありません。本書は、公開された報告の範囲で、立場を区別して記します。 歴史や統計の説明には巻末に参照資料を掲げ、物語の人物・会話は創作であることを明記しています。終章のあとには、旅行の準備、暮らすための手がかり、実用Q&Aと言葉・マナーの実践編を収めました。 シリーズ『世界の国のリアル』は、土地の歴史と人びとの暮らしを、物語を通してたどる読み物です。
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