中国 広東と華南のリアル
万象知楽編集部 / 世界の国のリアル
この本について
『中国 広東と華南のリアル』は、架空の登場人物の日常を想像しながら、中国南部――広東省を中心に、潮汕、客家の山、福建の海辺まで――の歴史・社会・そこに生きる人びとの暮らしを読む本です。夜明け前の珠江デルタの蒸し暑さ、茶楼の湯気、工場の朝礼、電子部品街の雑踏、祖先を祀る廟の線香。五つの朝から、物語は始まります。 この土地は、長いあいだ「世界の工場」「安い工場の街」として語られてきました。本書はその像を否定しませんが、そこで終わらせません。安く大量につくる土地が、速さと試作の土地へと変わろうとする姿と、その途中で誰かが取り残される現実。そのどちらにも、同じ重さで目を向けます。 以下は架空の人物です。年齢は二〇二六年を基準にしています。実在の人物や、特定の証言者をもとにした人物ではありません。 麦さん(五十五歳)、広州の旧市街・西関に生まれ育った「老広州」。市場で海鮮の目利きをし、朝は行きつけの茶楼で飲茶をします。妻と孫がいます。口ぐせは「食は広州にあり」。 小陳(二十九歳)、湖南省の農村の出身で、大学を出て深圳に来たハードウェアの起業家。二つの会社をつぶし、いまは三つ目の会社で試作を重ねています。口ぐせは「まず作ってみる」。 阿花(四十二歳)、広西の山あいの村の出身で、東莞の工場で二十年働いてきた女性。村に三階建ての家を建て、二人の息子は村の祖父母のもとで育ちました。口ぐせは「苦労は厭わない」。 林おじさん(六十歳)、潮汕の村に生まれ、いまは深圳で乾物や海産物を扱う小さな商いをしています。親族は東南アジアにも散らばっています。口ぐせは「一族あっての自分」。 木下(三十八歳)、日本の電機メーカーから深圳に派遣された、電子部品の調達担当の駐在員。単身での赴任です。読者の分身です。 歴史や統計の説明には巻末に参照資料を掲げ、物語の人物・会話は創作であることを明記しています。終章のあとには、旅行の準備、暮らす・働くための手がかり、実用Q&Aと言葉・マナーの実践編を収めました。 シリーズ「世界の国のリアル」は、土地の歴史と人びとの暮らしを、物語を通してたどる読み物です。
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