マリのリアル
万象知楽編集部 / 世界の国のリアル
この本について
『マリのリアル』は、架空の登場人物の日常を想像しながら、マリの歴史・社会・そこに生きる人びとの暮らしを読む本です。夜明けのニジェール川に浮かぶ細長い舟、バマコの路地に響くコラの弦の音、毎年みんなの手で泥を塗り直されるジェンネの大モスク。 この国は「砂漠と紛争の国」「援助の対象」として語られることの多い国です。本書はその像を否定しませんが、そこで終わらせません。ニジェール川という大河を背骨にもち、かつて金と塩と学問で名を知られた帝国の記憶を抱き、世界に届く音楽と、泥と藍の布の技を受け継いできた——それがこの本の立ち位置です。 案内役の人物と、その会話・心情・個人的な体験・場面描写は創作です。実在する人への取材や聞き取りを再現したものではありません。 登場人物が語る記憶は、実際の体験者の言葉ではありません。人物の意見は、その国の人びと全体を代表するものではなく、歴史的な事実や専門家の見解の代わりにもなりません。 歴史上の出来事、統計、制度などの説明には、本文中の資料番号に対応する参照資料を巻末に掲げています。資料が裏付ける範囲と、物語として描いた部分は区別してお読みください。 本書は、架空の五人の案内役の日々をたどりながら、マリの歴史・文化・社会を物語で読む一冊です。アミナタ(二十代前半)、イブラヒム爺さん(高齢)、ファトゥマタ(年配)、ウスマン(若者)、中山さん(日本人男性)。 マリでは、二〇一二年以降、北部・中部を中心に武力衝突が続いてきました。二〇二〇年八月と二〇二一年五月には国軍の一部兵士による政変が起き、国連のマリ多面的統合安定化ミッション(MINUSMA)は二〇二三年十二月に撤収を終えました。本書は、誰が、いつ、何をしたかを事実として記し、断罪も美化もしません。政府、国軍、武装勢力、国連、旧宗主国のそれぞれの立場は、時点を添えて区別して書き、特定の民族や信仰を暴力と結びつけて語ることはしません。家を離れた人びと、命を落とした人びとは、数としてではなく、名前をもった一人ひとりとして描くよう努めました。 マリには、バンバラ、プル(フラニ)、マリンケ、ソンガイ、トゥアレグ、ドゴンなど、多くの民族が暮らしています。外務省の基礎データでは、宗教はイスラム教が八割とされ、伝統的な信仰やキリスト教とともに生きる人もいます。本書は、一つの民族や信仰を、この国の代表として描きません。ドゴンの仮面や儀礼のように、外の者には開かれていない部分のある文化は、見世物にせず、語ってよい範囲にとどめました。 歴史や統計の説明には巻末に参照資料を掲げ、物語の人物・会話は創作であることを明記しています。終章のあとには、旅行の準備、暮らすための手がかり、実用Q&Aと言葉・マナーの実践編を収めました。 シリーズ『世界の国のリアル』は、土地の歴史と人びとの暮らしを、物語を通してたどる読み物です。
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