マラウイのリアル
万象知楽編集部 / 世界の国のリアル
この本について
『マラウイのリアル』は、架空の登場人物の日常を想像しながら、マラウイの歴史・社会・そこに生きる人びとの暮らしを読む本です。夕方の湖に落ちる光、炭火の煙、道ですれ違うたびに交わされる長い挨拶。 この国は「アフリカで最も貧しい国のひとつ」という一行で語られることの多い国です。本書はその一行を消しませんが、そこで終わらせません。海のない細長い国土の相当な部分を湖が占め、人びとは畑と市場と湖を組み合わせて暮らし、大きな内戦を経ずに今日まで来た——それがこの本の立ち位置です。 案内役の人物と、その会話・心情・個人的な体験・場面描写は創作です。実在する人への取材や聞き取りを再現したものではありません。 登場人物が語る記憶は、実際の体験者の言葉ではありません。人物の意見は、その国の人びと全体を代表するものではなく、歴史的な事実や専門家の見解の代わりにもなりません。 歴史上の出来事、統計、制度などの説明には、本文中の資料番号に対応する参照資料を巻末に掲げています。資料が裏付ける範囲と、物語として描いた部分は区別してお読みください。 本書は、架空の五人の案内役の日々をたどりながら、マラウイの歴史・文化・社会を物語で読む一冊です。ムゼー・バンダ(八十代半ば)、エスタ(年配の女性)、タンビラ(二十代)、チサレ(二十代のはじめ)、森田さん(日本人、四十代)。 十九世紀に湖が人の売り買いの道となったこと、イギリスの保護領となったこと、独立後に長い一党制の時代があったことは、いずれも本書の大切な主題です。本書は、誰が、いつ、何をしたかを事実として記し、断罪も美化もしません。人の売り買いの責任を特定の民族や信仰に負わせることはしません。長い政権の時代についても、称える声と、厳しく批判する声が今も並んでいることを、そのまま書きます。 成人の節目の儀礼や、結婚・家族のあり方をめぐっては、マラウイの人びとのなかに、続けたい人、変えたい人、条件をつけて残したい人がいます。本書は外から結論を出さず、当事者の議論を書き留めます。HIVとエイズによって多くの家族が人を失った時期についても、亡くなった人を数にせず、遺された人を「かわいそうな人」にしないよう努めました。 歴史や統計の説明には巻末に参照資料を掲げ、物語の人物・会話は創作であることを明記しています。終章のあとには、旅行の準備、暮らすための手がかり、実用Q&Aと言葉・マナーの実践編を収めました。 シリーズ『世界の国のリアル』は、土地の歴史と人びとの暮らしを、物語を通してたどる読み物です。
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