ナミビアのリアル
万象知楽編集部 / 世界の国のリアル
この本について
『ナミビアのリアル』は、架空の登場人物の日常を想像しながら、ナミビアの歴史・社会・そこに生きる人びとの暮らしを読む本です。 この国は「砂漠の絶景の国」「サファリの国」として語られがちです。本書はその像を否定しませんが、そこで終わらせません。ドイツの植民地支配と、南アフリカの統治のもとでのアパルトヘイトを経て、一九九〇年に独立したこの国は、独立から三十数年のあいだに、過去の傷と、いまも残る土地と富の偏りを抱えながら、国として歩んできました——それがこの本の立ち位置です。 案内役の人物と、その会話・心情・個人的な体験・場面描写は創作です。実在する人への取材や聞き取りを再現したものではありません。 登場人物が語る記憶は、実際の体験者の言葉ではありません。人物の意見は、その国の人びと全体を代表するものではありません。 歴史上の出来事や統計の説明には、本文中の資料番号に対応する参照資料を巻末に掲げました。資料が裏付ける範囲と、物語として描いた部分は区別してお読みください。 本書は、架空の五人の案内役の日々をたどりながら、ナミビアの歴史・文化・社会を物語で読む一冊です。トゥーラ(三十歳)、カトゥーティレ(六十歳)、オマおばあちゃん(七十二歳)、ショーンボ(二十五歳)、黒田さん(日本人、四十代)。 二十世紀の初め、ドイツの植民地だった地で、ヘレロとナマの人びとが多数殺された出来事を、本書は第5章を中心に扱います。ドイツ外相は二〇二一年五月二十八日、一九〇四年から一九〇八年の出来事を、今後は公式に「ジェノサイド」と呼ぶと述べ、ナミビアと被害者の子孫に許しを求めると表明し、十一億ユーロの復興・開発の支援計画を示しました。法的な賠償の請求権は導けないとも述べています。ナミビア政府の報道官は「正しい方向への第一歩」と述べましたが、ヘレロやナマの当事者団体や活動家からは、金額が足りない、当事者が交渉に十分加わっていないという批判が出ています。二〇二五年八月の時点で、資金はまだ支払われていません。犠牲者の数は推計に幅があります。本書は、誰が、いつ、何をしたかを事実として記し、断罪も美化もしません。いま生きているドイツ系の人びとを、過去の罪と同じものとして扱うこともしません。 第一次世界大戦のあと、この地は南アフリカの統治下に置かれ、アパルトヘイトが持ち込まれました。独立運動の中心を担った組織がSWAPO(南西アフリカ人民機構)で、一九九〇年三月二十一日に独立しました。独立後の国は「国民和解」を選び、土地と富の偏りは残りました。土地をどう動かすかについては、政府、当事者団体、活動家の立場が分かれており、本書はそれぞれが何を述べているかを区別して書きます。 歴史や統計の説明には巻末に参照資料を掲げ、物語の人物・会話は創作であることを明記しています。終章のあとには、旅行の準備、暮らすための手がかり、実用Q&Aと言葉・マナーの実践編を収めました。 シリーズ『世界の国のリアル』は、土地の歴史と人びとの暮らしを、物語を通してたどる読み物です。
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